芸能界みたくYouTuberの世界にもNextstage、VAZ、Kiiなど数多くのユーチューバー事務所が存在しています。その中でも、最大手事務所の株式会社UUUMは立ち上げ以降『Hikakin』や『はじめしゃちょー』など日本のトップクリエイターを擁し、順調に力強い成長を継続してきました。
しかし、2020年1月14日に発表された『20年5月期 2Q決算』は、多くの投資家に「この企業大丈夫か?!」と不安を煽る内容で、翌日の株価は-10%と大幅な値下がりを見せました。盤石との呼び声もあった最大手事務所UUUMの将来を危ぶませた、この度の決算資料の中身を紐解いていきます。
UUUM決算の分析
UUUM売上高は?
はっきり言って、売上は停滞の兆しが色濃く出ています。下記は決算資料より売上高(四半期)の推移の棒グラフになります。
UUUMのように何よりも成長に勢いが欲しい新興企業は開発に資金を大量に投入しているので、粗利や純利益は現在のところそこまで注視する必要がなく、どれだけ成長しているかは『売上高』が指標として一番大切となってきます。
前年同時期比では118%増しながらも、第1Q比較では55億から54億へと若干の減少を示しています。また、2Q連続の売上減少は近年では初めての動きです。以上から、成長の鈍化は言い逃れできない事実として数字に現れました。
UUUM売上高の内訳は?
売上の内訳としては、アドセンス(広告再生数)と広告(企業とのタイアップ案件)が減少しています。特に、アドセンスは目標としている153億円から約90億円も少ない"60億円"の進捗(達成率率39%)として、厳しい苦境に立たされています。
UUUMは、広告やクリエイターサポート、自社サービスの売り上げ拡大を重要課題として急ピッチで進めていますが、いまは売り上げの約54%を占めるアドセンスの収益に頼っている部分が多く、経済基幹の傾きは経営全体に影響を与えることとなるでしょう。
UUUMのチャンネルや再生数
一方で、所属チャンネル数は増加しており、現在9,170のチャンネルと膨大な数のクリエイターを抱えています。しかしながら、UUUM全体の総再生回数は 第1Qから大きく後退しており、約115億回再生から109億回再生と減少を示しています。
また、日本のYouTuberチャンネル登録者数ランキングにおいても、トップ10ランカー&トップ100ランカー共に徐々に降格の動きを見せています。つまり、それほど力のないチャンネルばかり量産しており、チャンネル登録や再生数では明らかな陰りが生じているのです。
要するに、所属クリエイターの力が弱まり、動画の再生数も落ち込み、結果として売り上げの大部分を占めるgoogleアドセンスの収入が減るという悪循環が発生しています。その原因はいったい何が考えられるのでしょうか?
UUUM停滞の背景は?
強力な競合の出現
芸能人のYouTube参入が止まりません。直近では、カリスマお笑い芸人”田村淳”による『ロンブーチャンネル』、絶大な人気を誇るスーパーモデル『ローラ』、日本が誇る国民的アイドルグループ『ARASHI』など、お笑い芸人からモデル、歌手まで芸能界全体からYouTubeデビューが相次いでおり、テレビという強力なチャネルをも持っていることから、影響力の強さでは勝負になりません。
また、大御所タレントだけではなく、若手芸人やアイドルの卵など、一芸に秀でたポテンシャルを秘めた芸能人も次々と動画を上げており、YouTubeはますます再生数を奪い合う群雄割拠の戦場となることでしょう。
💕YouTube 公式 #ROLA チャンネル スタート💕#ローラ @RolaWorLD さんが遂に #YouTubeデビュー 👏👏
— YouTube Japan (@YouTubeJapan) 2020年1月8日
記念すべき1つ目の動画では、チャンネル開設に至る経緯や、やりたい企画を発表✨
🎬https://t.co/OhW0nxH05y
これからどのような彼女が見られるのか…😍
チャンネル登録してお楽しみに💄 pic.twitter.com/hRFYn6ttg6
子供向けのコンテンツ
YouTube界を激震させた大ニュース『子ど向けコンテンツのパーソナライズド広告の停止』、これは既に徐々に実行されつつあり、UUUMの多くの所属クリエイターに大影響を与えています。
UUUMの視聴者層は、夏休みなど長期休暇に再生数が爆上げされることから、その多くが学生などの子供がマジョリティであると推測されています。最もボリュームを占めている層向けの動画からアドセンスが一切はく奪され、大打撃を受けています。
トレンド乗り遅れ
いまのYouTubeの流行りとして『ヒューマンバグ大学』や『フェルミ研究所』といったチャンネルのような『漫画コンテンツ』がひとつあげられます。
UUUMも『UUUM MANGA』と銘打って参戦するものの結果は惨敗、わずか500回にも満たない悲惨な再生数をチョロチョロと稼ぐ残念コンテンツと化しています。
また、『メンタリスト Daigo』チャンネルの様にビジネスや専門性の高いチャンネルが現在のYouTubeトレンドとして台頭しており、アドセンスの単価もエンタメジャンルに比べて割高となっていると報告が上がっています。
しかし、UUUMのトップクリエイターはエンタメ系の動画配信が中心的ですので、プロフェッショナル性を求められる分野では完全に乗り遅れていますし、参入したとしても太刀打ちできるのか、厳しい結末が待ち受けているかもしれません。
タレント求心力の低下
UUUMに所属することで「タレントにとってどのようなメリットがあるのか」、今一度考え直さねばならない時期かと思います。今をときめき大人気チャンネル『ヴァンゆんチャンネル』も大手芸能事務所の太田プロに引き抜かれる形となってしまいました。
クリエイターサポートを事業としても推進しているようですが、駆け出しのペーペーのケアではなく、『軌道に乗った調子の良いチャンネルをどのように引き留めるか?』貴重なキャストの流出を防ぐことが重要な課題となるでしょう。
そもそも、500人弱ほどの従業員数で9,170ものチャンネルの面倒をどのように見ているのか実態に疑問が湧かざるを得ませんけれども...。
UUUMの今後、将来について
辛辣なダメ出し要素が浮き彫りとなり、投資家からの信用を絶賛失っている最中ではありますが、もちろんさらなる成長にかけて期待できるプラス要素もあります。
いいところ①企業案件は順調
タイアップ広告は想定内の数字の推移を辿っており、YouTube・Googleの影響をあまり受けない部分ですので、企業案件からの収益が安定することは言わずもがな会社経営の足元を固められる嬉しい傾向です。
取引先も大手コンビニチェーンの株式会社ローソンや世界トップの飲料メーカーコカ・コーラなど大企業の案件も受注しています。東京オリンピックの宣伝という名誉な仕事も担っています。
3カ月ごとに20~40人くらいのペースで雇用を増員していますが、内訳はタイアップ広告の営業が多いかもしれません。UUUMは新卒募集も行っていますが、幅広い職種で中途採用を常時行っていますので、興味のある方は下記リンクからぜひご覧ください。
いいところ② 市場分析は正しい
インフルエンサーマーケットの市況把握が正確に出来ている印象です。決算資料の後半は、ほとんどが業界環境のレポートが占めており、今現在の市場について詳しく解説、UUUMの取るべき道をしっかりと見定めています。
これまで以上に個人がフィーチャリングされる時代に、UUUMは影響力を持ったインフルエンサーの輩出にこれまで以上に力を入れて取り組むことでしょう。
いいところ③経費削減は順調
社員数は増加しているものの、人件費をはじめ広告宣伝費にて第1Qと比べて削減が出来ています。ただ事務所を六本木ヒルズ森タワーに移転してからは、家賃が1か月あたり2.833万円とかなり高額ですので、今後もし衰退が続くようでしたらネックとなるかもしれません。
いいところ④まだ柔軟に動けるフェイズ
現状では、日本指折りのインフルエンサーが所属していますし、まだ中小企業の規模なので、どのベクトルにも動けますしある程度の業績を上げることは可能だと思います。
本格芸能事務所として有名タレントとガチンコ勝負しても面白いでしょうし、abema TVのようにネットテレビ局として旗揚げするのも良しでしょう、もしくは広告代理店としてもポテンシャルは十分にあるでしょう。舵を切って現状打破に努めましょう。
UUUM決算まとめ
- 売上のGoogleアドセンス収益が下がってきており、
- 解決には脱エンタメ中心で他分野への展開が急務
- 課題として強力なタレントの養成と引き留めが必要
問題が浮き彫りとなっているので、早急な解消に乗り出さなければ、成長のストップに追い打ちがかかり、さらなる影響力の低下は免れないでしょう。日本最大手のYouTuber事務所が、今後どのような経営を進めていくか行方を見守っていきましょう。